持続可能な建築・都市を実現していくためのイノベーションを如何に進めていくか?
いま、日本には90億平米以上の建築がストックされています。近年、1年間あたりの新築量は1億5千万平米未満であるので、持続可能な建築・都市を実現していくためには、既存建築ストックを持続可能にしていかねばなりません。建築は放っておいては、劣化・陳腐化していってしまいます。建築が、「どのような要素で成り立っていて、どのように働いているのか」情報・データを集め分析し、その時点でのニーズに適合するように再設計し、改修などの手を打っていく必要があります。左図にあるように、人工物の特性をデータ・情報として収集した上で、それをもとに設計情報を生成し、人工物に反映させていくための学理づくりに取り組んでいます。
2003年頃に生まれた概念“information embedded building”
INFORMATION EMBEDDED BUILDING’ FOR SUSTAINABLE LIVING: Tomonari YASHIRO・Proceedings of the 2008 World Sustainable Building
特任教授
野城 智也
建築生産、サステナブル建築、イノベーションマネジメント
1994年、武蔵工業大学(東京都市大)野城研究室では、世界に先駆けて、建築を作るまでの過程でどのくらいのエネルギーが使われ、地球温暖化ガスを排出するのかを分析し、国際学会で発表しました。以来、建築・都市のサステナビリティにかかわる研究を牽引してきました。
住宅を建設するために使用されるエネルギー総量試算例
Tomonari Yashiro、 Nobuhiro Yamahata、 ’Energy use and CO2 emission by constructing houses’、 Proceedings of CIB TG8 symposium、 Building Research Establishment、 1994.5
建築各所にセンサーを配置し収集したデータを解析し、空調機器、照明、開口部、換気システムを総合的に最適制御していくシステムを開発し、その改良・普及に取り組んでいます。
図版は、2012年に竣工した東京大学教養学部にある理想の教育棟(Komcee21)に搭載されたシステムです。下図の開口部と空調、照明の協調制御システムの開発は、信太洋行 現・東京都市大学准教授が主導しました。
建築にIoTが普及することによって、エネルギーの使用量・地球温暖化ガス排出量を、現実的な費用で、計測・報告・検証できるようになっていることを踏まえ、どのようにすれば、建築分野にカーボントレーディングが導入できるのか研究しています。
建築・都市におけるデジタルツインの恩恵を拡げ、その持続可能性を高めていくには、多くのセクター、ドメインで共通に参照できる空間記述が必要になります。当研究室では、東京大学生産技術研究所インタースペース研究センターの支援を得て、東京都市大学キャンパスの空間記述モデルを試作中です。