今日の情報通信技術を支えている半導体エレクトロニクスは、その性能向上限界と消費電力増大が世界的に問題となっています。これを解決するために、クリーンルーム内の多数の半導体結晶成長、プロセス装置を駆使し、ゲルマニウム(Ge)という新規高性能材料を用いた次世代の超低消費電力・光電子融合素子、具体的には、歪み Ge 薄膜や Ge 量子ナノドットを用いた、超高速 トランジスタおよび発光デバイスの開発を進めています。
平成 27 年度より、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業『ゲルマニウムを基幹材料とするナノエレクトロニクス先端融合研究基盤の形成』(平成 27〜31 年度)プロジェクトを推進しております。本プロジェクトでは、研究開発体制として国内外の研究者との連携を強化し、これまでに開発した Ge 量子デバイスと、ナノ・エレクトロ・メカニカル・システム(NEMS)との融合を図ることにより、単電荷センサーや超微小位置歪みセンサー等への広い分野への応用を可能とする、Ge 系新機能・量子ナノデバイスの研究基盤を構築することを目指しております。
Ge高速デバイス、高効率発光デバイスの実現には、高品質なGe結晶をSi基板上に形成することが不可欠です。Geの結晶成長と貼り合わせ技術を利用することで、高品質かつ結晶歪みを有する歪みGe-on-Insulator基板の形成に成功しました。Siウェハーを置き換えることが期待できます。
分子線エピタキシー(MBE)装置により、高品質なSi/Ge半導体ヘテロ構造を結晶成長により作製し、歪みGeチャンネル構造において半導体の中でも最も高い正孔移動度を達成しました。さらにMBEと原子層堆積装置(ALD)を組み合わせることで、超高品質ゲート絶縁膜/Ge界面を実現し、超高移動度GeチャンネルMOSFETデバイスを目指します。
LSIの超低消費電力化に向けて、シリコンチップ上の光配線が非常に期待され、そのためにモノリシックに集積可能な発光素子実現が求められています。そのために、Si上に結晶成長可能である歪みGeやGe量子ドットによる発光構造、さらにマイクロディスク、フォトニック結晶などの微小共振器構造を組み合わせ、シリコン上高効率発光デバイス、光配線を目指しています。
本来間接遷移型半導体であるGeは、結晶歪み導入によるバンドエンジニアリングによって、直接遷移型に近づけることが可能で、それによって幅広い光デバイス応用への道が開けます。これまでに、Si上GeやGOIウェハーの選択エッチング加工により、マイクロブリッジなどのマイクロ構造を形成し、非常に大きい歪みの導入を達成しています。さらに共振器やMEMSデバイスとの融合による新機能・高性能デバイスを目指しています。
さらに高効率・高機能発光電子デバイスを目指して、原子層材料の研究を行っています。特に遷移金属ダイカルコゲイナイド(TMD)材料に注目し、基礎光学特性を調べ、これまで分からなかった物性を明らかにすることで、次世代の新規デバイスの提案・実現へつなげていくことを目指しています。