「人生100年時代」といわれるように、超高齢化社会となりつつある日本では、シニア以降のライフスタイルが重要性を増しています。その中で、心身両面の健康をささえる毎日の食事の役割はますます大きくなり、食品に求められる機能も多様化しています。本研究室では、高齢者向け食品や機能性食品をはじめ、食品の機能化・高品質化を実現する技術開発を目指しています。最先端の食品化学や食品加工技術に基づき、「食品機能をデザインする」ための食品プロセス研究に取り組みます。
多糖類からなる食用微粒子を利用した高齢者向け栄養機能性食品の開発と消化シミュレーション
食事による栄養機能成分、特に抗酸化成分の効果的な摂取はがんや心疾患の予防に効果があり、健康寿命の延長にとって重要と考えられています。本研究では、脂溶性ビタミン類や水難溶性ポリフェノール類の効果的な摂取を可能とする食品技術を開発します。
当研究ユニットでは、食品由来の多糖類をベースとした食用微粒子の製造方法を開発し、これを使用して水に溶けない栄養機能成分を水に安定に分散させる技術について研究を行っています。本技術を利用することにより、特別な原料や高度な装置を利用することなく、水に溶けにくく不安定な抗酸化成分を含む食品を効率よく製造できると期待されます。
食品の栄養面での機能だけでなく、おいしく食べやすい食品によって得られる「食べることの楽しみ」も、食事をする人の心身の健康を保つうえでとても重要な要素です。本研究では、消化機能の低下した高齢者向け食品を想定し、食品の固さ、柔らかさなどの物理的な性質を調整する技術を開発します。さらに、加工・流通・調理のしやすさを考慮した濃縮や粉末化などの技術開発も行います。栄養機能成分を含有する多糖類微粒子を使用した液状食品を対象に、高齢者が安全に喫食するために重要となるとろみ付けやゲル化処理、粉末化などの加工技術について検討を進めています。
新たに開発した食品や機能を強化した食品が、体内でどのように消化され、どのように期待される効果を発揮するかを調べることは、食品のデザインコンセプトを評価し、さらなる高機能食品の開発指針を得るうえで非常に重要です。本研究では、最新鋭の胃消化シミュレーター装置を用いて、上記の研究で得られた試作食品の消化性評価を行い、その体内でのふるまいを把握することを目指します。他機関の研究チームや装置メーカーとも連携し、食品科学、化学工学、材料化学等の学問領域を超えた分野融合的なアプローチにより研究を推進します。