研究室について

機能性高分子研究室

近年、従来の電子のプロセスを基盤とする「エレクトロニクス」に加えて、プロトンが関わる現象に視点をおいた材料・工学技術、すなわち「プロトニクス」が注目されています。プロトンは物質の中で電子に次いで軽い粒子であり、電子と同様にプロトン伝導やトンネル効果を示します。また、プロトンは化学結合の切断-形成を伴って物質中を移動する特異な粒子でもあります。プロトンの積極利用が次世代の機能材料・デバイス開発にとって重要な鍵になると期待されます。これは、 ATP 合成酵素をはじめとする生体系におけるエネルギー代謝においても電子移動とともにプロトン移動が重要な役割を果たしていることからも明らかです。

現在、有機π共役化合物は有機エレクトロニクス分野において基幹材料として用いられていますが、それらの電気的特性は拡張されたπ共役系、すなわち分子集団系における非局在化したπ電子に由来します。本研究では、従来のπ共役系におけるπ電子をプロトンに置き換えた「プロトン共役分子システム」を創製し、π共役電子系に加えてプロトンの非局在系を活用した機能材料・デバイスを開発することを目的とします。

研究内容

本研究では、プロトン非局在系を実現する分子材料の設計・合成手法を確立し、プロトン共役構造、ナノ・メゾスケール構造、次元制御構造の特徴を生かした無水プロトン伝導体をはじめとする新機能分子材料を開発し、次世代蓄電・発電デバイスならびに関連材料へ応用します。

分子内および分子間での水素結合や配位結合の結合様式を精密重合プロセスや自己組織化プロセスを用いて調節することにより、有機物質を無水プロトン伝導体やπ電子/プロトン混合導電体として利用できるようになると期待しています。現在、水素結合ネットワークの幾何学構造制御や材料のメソポーラス構造化などにより、蓄電・発電デバイス応用に向けた高機能化共役ポリマーの開発に取り組んでいます。

研究スタッフ

  • 教授

     

    金澤 昭彦

    高分子合成、機能分子工学

  • 准教授

     

    黒岩 崇

    生物分子工学、酵素工学

研究紹介

一次元的な無水プロトン伝導チャネルをもつ燃料電池固体電解質の開発

高分子固体電解質型燃料電池の高性能化を目指し、これまで不可能であった無水状態で使用できる有機プロトン伝導体の開発に成功しました。例えば、炭酸のジアミドに相当する尿素を有機液晶化すると、らせん自己組織化により一次元水素結合分子鎖(尿素ポリマー鎖)が形成され、それらが一次元無水プロトン伝導チャネルとして作用することを明らかにしました。

高容量二次電池用のポリマー正極材の開発

一般溶剤として知られる二硫化炭素を出発原料として、炭素と硫黄が1:1 の化学量論的組成からなるπ共役ポリマーの合成法を確立しました。この化合物は電気伝導性とレドックス活性の両方の性質を示す特徴をもちます。リチウムイオン電池の正極材へ応用した結果、現在実用化されているコバルト酸リチウムよりも約 10 倍高い電気容量を示すことが確かめられました。

多重刺激応答性をもつイオン導電性ポリマーによる機能性電解質の開発

密重合により一次構造が制御されたカラムナー液晶性とイオン伝導性を示す高分子電解質を開発しました。これらは固体状態では真性ポリマー電解質として、溶液状態では昇温とともに親疎水相転移(白濁化)のみならず、逆ゾルゲル相転移(ゲル化)、体積相転移(ゲル収縮)といった奇異な多重の熱刺激応答挙動を示す機能性電解質として働きます。一般的な電解液とは対照的に温度上昇にしたがい電気伝導度は低下するので、二次電池の安全性の向上に貢献できます。

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